絵仕事依頼・受託時の契約書文例
著作権の譲渡をしない版
拍手より質問があったので返信を書きました----質問の返信
2017/11
文化庁のサイトにある著作権契約書作成支援システムを利用し生成された文章に、適宜改変を加えたもの。その他、各「契約書雛形」などの文例を参考に条文を用いています。※詳しくはページ下部へ。
前提として、依頼絵でも仕事絵でも、その絵の著作権は、描いた人・イラストレータに必ず帰属します。
たとえ依頼によって描かれた絵でも、たとえ制作の過程の修正で他者の意見が多く取り入れられいてもです。
契約書表記の「甲」「乙」が逆転したパターンも用意しました。
契約書
[受託者:絵描きさん](以下「甲」という。)と[委託者](以下「乙」という。)とは、イラスト作成業務の委託に関し、以下のとおり契約を締結する。
第1条 (委託)
乙は、甲に対し、以下のイラスト(以下「本著作物」という。)の作成を委託し、甲はこれを受託した。
(1) テーマ:
(2) サイズ:
第2条 (納入)
1 甲は乙に対し、本著作物を以下の形式により、平成●年●月●日までに、乙に対して納入する。
・psdデータにて、指定のオンラインストレージ上にアップロードする方法
2 乙は、前項の納入を受けた後速やかに納入物を検査し、納入物に瑕疵がある場合や、乙の企画意図に合致しない場合は、その旨甲に通知し、当該通知を受けた甲は、速やかに乙の指示に従った対応をする。
第3条(検品)
1 乙は甲より本著作物の納入がなされた日から 日(以下、「検査期間」という。)以内に、納入された本著作物の検査を行い、その検査結果について 日以内に甲に通知するものとする。ただし、過誤その他の瑕疵があったときは、直ちに甲に通知するものとする。
2 甲による本著作物納品の日から 日経過しても、乙が甲に、前項に基づく検査の結果を通知しない場合には、当該納入物は前項所定の検査に合格したものとみなす。乙が正当な理由なく本著作物の受領を拒否し、甲が乙へ当該成果物を納入した日から前項の期間を経過したときも同様とする。
第4条 (権利の帰属)
1 本著作物の著作権は甲に帰属する。乙から提出された作成指示書、テキスト原稿、画像等については、乙に帰属する。
2 制作途中に制作案等の用途に使用して、納品物として採用されなかった制作物に関する所有権及び使用権は甲に帰属する。
第5条 (利用許諾)
1 甲は、乙が本著作物をインターネット上に公開する目的で使用することを許諾する。2 甲は、乙が本著作物をインターネット上の公開またはコンテンツの維持の目的で改変することを許諾する。
3 乙が本著作物を上記1の目的以外で使用する場合には甲の許可を得なければならない。
4 乙は、甲の文書による同意なしに上記1および2で定める制作物の使用権、改変権を第三者に譲渡、移転、またはその他の処分を行うことはできない。
第6条(独占的利用許諾)
前条の許諾は、独占的なものとし、甲は、乙以外の第三者に対し、(1)印刷物における複製、販売、(2)インターネットホームページにおける掲載、(3)翻訳、の各形態で本著作物を利用することを許諾してはならない。
第7条 (著作者人格権)
1
甲は、乙が本著作物を利用するにあたり、その利用態様に応じて本著作物のサイズ、色調を変更したり、一部を切除することを予め承諾する。但し、乙は、これら改変であっても本著作物の本質的部分を損なうことが明らかな改変をすることはできない。
2
乙は、前項以外の改変を行う場合は、事前に甲の承諾を得なければならない。
3 乙は、本著作物を利用するにあたって、著作者の表示をすることを要しない。
4 乙が本著作物の内容・表現又はその題号に変更を加える場合(拡大、縮小、色調の変更等も含む。)には、甲の承諾を必要としない。
5 本著作物の公表名義は、甲の著作権の譲渡の有無及び著作者人格権の不行使にかかわらず、乙の名義とする。
第8条 (保証)
甲は、乙に対し、本著作物が第三者の著作権その他第三者の権利を侵害しないものであることを保証する。
第9条 (対価)
乙は、甲に対し、イラスト作成業務及び本著作物の利用許諾の対価、その他本契約に基づく一切の対価として、金○○○円(消費税込み)を支払う。
報酬・対価に係る消費税や所得税(源泉徴収)については、支払いの相手方や報酬・対価の額等によって取り扱いが異なりますので、必要に応じ税の専門家に相談してください。
第10条 (二次的利用)
1 本契約の有効期間中に、本著作物が印刷等、二次的に利用される場合、乙はその利用に関し事前に甲の承諾を得なければならない。
2 本著作物の二次的利用にあたり、乙は報酬等具体的条件について甲と協議の上決定する。
第11条 (有効期間)
1 本基本契約の有効期間は、本基本契約締結の日から満1ヶ年間とする。ただし期間満了の1ヶ月前までに、甲乙いずれからも何らの意思表示もないときは、本基本契約と同一条件で更に1ヶ年間延長するものとし、以後も同様とする。
2 個別契約が本基本契約の失効時に存続している場合については、前項にかかわらず、本基本契約が当該個別契約の存続期間中効力を有するものとする。
第12条 (その他)
本契約に定めのない利用態様については、甲乙別途協議の上、利用の可否、対価等につき決するものとする。
本契約締結の証として、本契約書2通を作成し、甲乙記名捺印の上、各自1通を保持する。
平成 年 月 日
甲 | 住所 | |
氏名 | 印 | |
乙 | 住所 | |
氏名 | 印 |
補足:それぞれできること・できないこと
この契約が締結された場合、依頼人/受託人がそれぞれできること・できないことを目立ったところだけ書いてみました。
依頼人(委託者、クライアント、契約書文中「乙」)
- ○納品物のサイズ変更・トリミングを許諾を求めることなく実行ができ、利用・公開できる。(5条、6条、7条)
- ○掲載のウェブページにおいて、制作者の氏名表記をしなくてもいい。(第7条3項)
- ×納品されたものの著作権に関して、有償・無償に関わらず第三者に譲渡することはできない。(第3条、そもそも著作権が譲渡されていないから)
- ×二次著作物の創作について言及しました(第10条)。納品物のデザインなどを土台としたものが 依頼人側によって新たに創作される場合や、 または納品物を利用して印刷物を作るなどの場合、その画像の制作者からの利用許諾(場合により 対価の支払い)が必要になる。
- ×別のタイトルのゲームなどに納品された画像を利用する場合、その画像の制作者に利用許諾(場合により 対価の支払い)をしなければならない。
- ×納品済みの成果物について、依頼人側で上書き・修正を行うことはできません。これは、著作権が譲渡される場合の契約でも上書き修正は出来ません。(著作者人格権侵害となります)
絵描きさん(受託者、契約書文中「甲」)
- ○およそいつも通り。宣伝ができるか、は依頼人にご質問ください。
- ×著作権者ではあるが、個人の裁量で納品物をWebなどで公開するべきではない。(第5条)
その他役立ちそうな条文
第○条 委託料の変更
前条第○条に基づく委託料の金額に関しては、本条各号のいずれかに該当する場合には、甲は、該当することとなった日から、 日以内に、乙に再度見積書を提出することにより、乙に対して委託料の変更を請求することができるものとする。ただし、その請求金額は、実費を上限とする。(1)乙に起因する原因により、乙がイラストの仕様を変更するとき
(2)乙に起因する原因により、乙が本著作物の納入期限を変更するとき
(3)乙が提供する原始資料の遅延及び過誤等が原因で、甲による制作に掛かる費用が増加したとき
所謂、製作の途中での仕様変更、作業の重複などによって、当初の想定よりも
余分な作業を強いられた場合の対策用の条項です。TwitterのTLで困っている絵描きさんをを見かけたことがあるので。
企業として信頼を得たい場合は契約書本文にてお使いください。
その他役立ちそうな条文・2
第○条 保証及び責任範囲
1 甲は、乙が指定する仕様書どおりの特徴をイラストが作成されていること、及び、甲が乙に納品する納入物には、不良品や瑕疵がないことを甲に保証し、この保証は本著作物の納品日から1年間/6ヶ月間/3ヶ月間有効とする。2 納入物であるイラストが、乙の指定する仕様書に従ったものではなく、かつ、このことが甲の起因する原因によるときは、甲は、前項に基づく保証期間中は、甲の単独の費用と責任において、イラスト上の過誤の訂正・補修等を行う。
所謂「瑕疵担保期限」です。本文契約書10条と11条の間くらいに挿入が適切かと。
クライアント側の保証をする条文です。絵仕事だと保証期間は3か月くらいで大丈夫の気もするけど、この事案に該当する場合が少ないと思われる(下部リンク参照)ので6ヶ月でも大丈夫かなあ、とは。
「瑕疵」とは?(別窓)
更新履歴
20120708 修正版公開20120711 Web拍手の「第9条(有効期間)とは別に、瑕疵担保期間と検査期限があれば万全だと思います。」というコメントを受け、第3条に「検品」の条文を挿入。以下の条文の数字は一つずつずれました。その他本文内容は変更していません。
そして役に立ちそうな条文・2として、瑕疵担保期間にあたる「保証及び責任範囲」を入れてみました。「瑕疵」とは何?(別窓)という説明も作ってみたがどうだろう。
20120717 第10条に「二次的利用」の条文を追加。第10条以降の条文の数字は一つずつずれました。その他本文内容は変更していません。
20121014 第7条5項に、「成果物の公表名義」の項を追加。第3項にて「著作者の名前の非表示を許可」、第5項にて「画像掲載時にまとめて『(C) xxxxxxx.CO.,LTD All rights reserved.』の表記を許可」の内容。((C)表記を許しても、著作権が移転したことにはなりません)
使用時の注意
- [重要]絵描きさん、クライアント、どちらが「甲」「乙」なのか、しっかりと第1条又は契約書前文でご確認ください。このページに甲乙逆転版載せておきましたのでご利用ください。
掲載webサイトの「All rights reserved」表記にを許す、などは別途単にメール上のやり取りで決めたら良いと思います。その辺はカリカリする必要がないとは思います。交渉が面倒になるといけないので、対応条文を第7条5項に作成しました。
免責されたい
このページの契約書文面は、文化庁のサイトにある著作権契約書作成支援システムを利用し生成された文章に、適宜改変を加えたものです。
その他、各「契約書雛形」などの文例を参考に条文を用いています。
「契約書 雛形」でぐぐった上で、出てきた契約書雛形の無料DLできるもののうち、
「システム開発業務請負基本契約書」「ホームページ制作業務委託契約書」「業務委託契約書 WEB製作」
「ソフトウェア開発委託契約書」「原案共同作成事業契約書」
などの表記を積極的に借りてきています。
一応「契約書の文面は、思想又は感情を創作的に表現したものではないので著作物には当たらず、契約書それ自身は著作物に該当しない」という考え方に基づき、改変の上公開をしています。この点について誰かから責められたら全力で言い逃れをします。