絵仕事依頼・受託時の契約書文例
著作権の譲渡をしない版inverse
実践検証など終え次第、契約書をより良いバージョンへアップさせる予定です。
2015/09
文化庁のサイトにある著作権契約書作成支援システムを利用し生成された文章に、適宜改変を加えたもの。その他、各「契約書雛形」などの文例を参考に条文を用いています。※詳しくはページ下部へ
元ページのものと比べて甲・乙の表記が逆転しています。
契約書
[受託者:絵描きさん](以下「乙」という。)と[委託者](以下「甲」という。)とは、イラスト作成業務の委託に関し、以下のとおり契約を締結する。
第1条 (委託)
甲は、乙に対し、以下のイラスト(以下「本著作物」という。)の作成を委託し、乙はこれを受託した。
(1) テーマ:
(2) サイズ:
第2条 (納入)
1 乙は甲に対し、本著作物を以下の形式により、平成●年●月●日までに、甲に対して納入する。
・psdデータにて、指定のオンラインストレージ上にアップロードする方法
2 甲は、前項の納入を受けた後速やかに納入物を検査し、納入物に瑕疵がある場合や、甲の企画意図に合致しない場合は、その旨乙に通知し、当該通知を受けた乙は、速やかに甲の指示に従った対応をする。
第3条(検品)
1 甲は乙より本著作物の納入がなされた日から 日(以下、「検査期間」という。)以内に、納入された本著作物の検査を行い、その検査結果について 日以内に乙に通知するものとする。ただし、過誤その他の瑕疵があったときは、直ちに乙に通知するものとする。
2 乙による本著作物納品の日から 日経過しても、甲が乙に、前項に基づく検査の結果を通知しない場合には、当該納入物は前項所定の検査に合格したものとみなす。甲が正当な理由なく本著作物の受領を拒否し、乙が甲へ当該納入物を納入した日から前項の期間を経過したときも同様とする。
第4条 (権利の帰属)
1 本著作物の著作権は乙に帰属する。甲から提出された作成指示書、テキスト原稿、画像等については、甲に帰属する。
2 制作途中に制作案等の用途に使用して、納品物として採用されなかった制作物に関する所有権及び使用権は乙に帰属する。
第5条 (利用許諾)
1 乙は、甲が本著作物をインターネット上に公開する目的で使用することを許諾する。2 乙は、甲が本著作物をインターネット上の公開またはコンテンツの維持の目的で改変することを許諾する。
3 甲が本著作物を上記1の目的以外で使用する場合には乙の許可を得なければならない。
4 甲は、乙の文書による同意なしに上記1および2で定める制作物の使用権、改変権を第三者に譲渡、移転、またはその他の処分を行うことはできない。
第6条(独占的利用許諾)
前条の許諾は、独占的なものとし、乙は、甲以外の第三者に対し、(1)印刷物における複製、販売、(2)インターネットホームページにおける掲載、(3)翻訳、の各形態で本著作物を利用することを許諾してはならない。
第7条 (著作者人格権)
1
乙は、甲が本著作物を利用するにあたり、その利用態様に応じて本著作物のサイズ、色調を変更したり、一部を切除することを予め承諾する。但し、甲は、これら改変であっても本著作物の本質的部分を損なうことが明らかな改変をすることはできない。
2
甲は、前項以外の改変を行う場合は、事前に乙の承諾を得なければならない。
3 甲は、本著作物を利用するにあたって、著作者の表示をすることを要しない。
4 甲が本著作物の内容・表現又はその題号に変更を加える場合(拡大、縮小、色調の変更等も含む。)には、乙の承諾を必要としない。
5 本著作物の公表名義は、乙の著作権の譲渡の有無及び著作者人格権の不行使にかかわらず、甲の名義とする。
第8条 (保証)
乙は、甲に対し、本著作物が第三者の著作権その他第三者の権利を侵害しないものであることを保証する。
第9条 (対価)
甲は、乙に対し、イラスト作成業務及び本著作物の利用許諾の対価、その他本契約に基づく一切の対価として、金○○○円(消費税込み)を支払う。
報酬・対価に係る消費税や所得税(源泉徴収)については、支払いの相手方や報酬・対価の額等によって取り扱いが異なりますので、必要に応じ税の専門家に相談してください。
第10条 (二次的利用)
1 本契約の有効期間中に、本著作物が印刷等、二次的に利用される場合、甲はその利用に関し事前に乙の承諾を得なければならない。
2 本著作物の二次的利用にあたり、甲は報酬等具体的条件について乙と協議の上決定する。
第11条 (有効期間)
1.本基本契約の有効期間は、本基本契約締結の日から満1ヶ年間とする。ただし期間満了の1ヶ月前までに、甲乙いずれからも何らの意思表示もないときは、本基本契約と同一条件で更に1ヶ年間延長するものとし、以後も同様とする。
2.個別契約が本基本契約の失効時に存続している場合については、前項にかかわらず、本基本契約が当該個別契約の存続期間中効力を有するものとする。
第12条 (その他)
本契約に定めのない利用態様については、甲乙別途協議の上、利用の可否、対価等につき決するものとする。
本契約締結の証として、本契約書2通を作成し、甲乙記名捺印の上、各自1通を保持する。
平成 年 月 日
乙 | 住所 | |
氏名 | 印 | |
甲 | 住所 | |
氏名 | 印 |
補足:それぞれできること・できないこと
この契約が締結された場合、依頼人/受託人がそれぞれできること・できないことを目立ったところだけ書いてみました。
依頼人(委託者、クライアント、契約書文中「甲」)
- ○納品物のサイズ変更・トリミングを許諾を求めることなく実行ができ、利用・公開できる。(5条、6条、7条)
- ○掲載のウェブページにおいて、制作者の氏名表記をしなくてもいい。(第6条3項)
- ×納品されたものの著作権に関して、有償・無償に関わらず第三者に譲渡することはできない。(第3条、そもそも著作権が譲渡されていないから)
- ×二次著作物の創作について言及しました(第10条)。納品物のデザインなどを土台としたものが 依頼人側によって新たに創作される場合や、 または納品物を利用して印刷物を作るなどの場合、その画像の制作者からの利用許諾(場合により 対価の支払い)が必要になる。
- ×別のタイトルのゲームなどに納品された画像を利用する場合、その画像の制作者に利用許諾(場合により 対価の支払い)をしなければならない。(当然ですが)
絵描きさん(受託者、契約書文中「乙」)
- ○およそいつも通りです。
- ×著作権者ではあるが、個人の裁量で納品物をWebなどで公開するべきではない。(第5条)
その他役立ちそうな条文
第○条 委託料の変更
前条第○条に基づく委託料の金額に関しては、本条各号のいずれかに該当する場合には、乙は、該当することとなった日から、 日以内に、甲に再度見積書を提出することにより、甲に対して委託料の変更を請求することができるものとする。ただし、その請求金額は、実費を上限とする。(1)甲に起因する原因により、甲がイラストの仕様を変更するとき
(2)甲に起因する原因により、甲が著作物の納入期限を変更するとき
(3)甲が提供する原始資料の遅延及び過誤等が原因で、乙による製作に掛かる費用が増加したとき
所謂、製作の途中での仕様変更、作業の重複などによって、当初の想定よりも 余分な作業を強いられた場合の対策用の条項です。TwitterのTLで困っている人を見かけたことがあるので。
その他役立ちそうな条文・2
第○条 保証及び責任範囲
1 乙は、甲が指定する仕様書どおりの特徴をイラストが作成されていること、及び、乙が甲に納品する納入物には、不良品や瑕疵がないことを乙に保証し、この保証は本著作物の納品日から1年間/6ヶ月間/3ヶ月間有効とする。2 納入物であるイラストが、甲の指定する仕様書に従ったものではなく、かつ、このことが乙の起因する原因によるときは、乙は、前項に基づく保証期間中は、乙の単独の費用と責任において、イラスト上の過誤の訂正・補修等を行う。
所謂「瑕疵担保期限」です。本文契約書10条と11条の間くらいに挿入が適切かと。
クライアント側の保証をする条文なので、提示された元契約書に同様の条文があれば疑わずに残しておいて良いところです。絵仕事だと保証期間は3か月くらいで大丈夫の気もするけど、この事案に該当する場合が少ないと思われる(下部リンク参照)ので6ヶ月でも大丈夫かなあ、とは。
「瑕疵」とは?(別窓)
kwsk
togetterの
まとめページを参照して下さい。色がついているところだけ読んでおけば大丈夫です。
(2012年5月に契約書文例初稿を作成、のち7月7日により簡単に使える感じに改定文例を作成、公開しています。)
ゲーム業界周りで慣・例となっているらしい「著作権の無償譲渡を前提とした依頼」の横行っぷりがよろしくないなあ、と思ったので作ってみました。
著作権譲渡に関する条文以外のところは、クライアントから送られてきた契約書のままで普通はOKだと思いますので、
それ以外、特に著作権に関するあたり(背景色が違うあたり)を、コピペで総とっかえ使える程度にしてみました。
第9条「有効期間」については、いままでこの条項が盛り込まれている絵仕事系の契約書をみたことがあまりないので、一応入れておきました。
目的
フリーの絵描きさんなどの間で自由に共有し、気軽に交渉に使えるようにしてみたいです。
その他こういった交渉をするときのメールの書き方テンプレートなども作成できればなあ、と思うので、
メールの書き方に強い人、言いくるめるのがうまい人、フリーの絵仕事での交渉経験がある人、普段の仕事が営業の人など、
みんなが協力して作っていければいい結果が生まれるのではないかなあと思いますがいかがなものでしょう。
免責されたい
このページの契約書文面は、文化庁のサイトにある著作権契約書作成支援システムを利用し生成された文章に、適宜改変を加えたものです。
その他、各「契約書雛形」などの文例を参考に条文を用いています。
「契約書 雛形」でぐぐった上で、出てきた契約書雛形の無料DLできるもののうち、
「システム開発業務請負基本契約書」「ホームページ制作業務委託契約書」「業務委託契約書 WEB製作」
「ソフトウェア開発委託契約書」
などの表記を積極的に借りてきています。
一応「契約書の文面は、思想又は感情を創作的に表現したものではないので著作物には当たらず、契約書それ自身は著作物に該当しない」という考え方に基づき、改変の上公開をしています。この点について誰かから責められたら全力で言い逃れをします。