イラスト作成依頼時の契約書文例/著作権の譲渡をする版
文化庁のサイトにある著作権契約書作成支援システムを利用し生成された文章に、適宜改変を加えたもの。
「著作権の無償譲渡を前提とした依頼」の横行っぷりがよろしくないなあ、と思ったので作ってみました。
システムから生成された文章の改変なしのコピペ部分も多くあります。特に第1条あたりは途中での仕様変更とかもままあるので、契約書記載にはないことの方が多いかもしれんです。
第4条、著作者人格権の項はわざとコピペ通りにしてあります。著作権の譲渡がなされた場合でも、
4条1項「許諾を必要とする/しない」などは別項目として取り決められる権利項目だからです。
「著作権の譲渡をしない版」と比べて特に増えたところは灰色の背景表示をつけました。著作権を譲渡する場合は第6条(対価)部分にて、譲渡した権利への対価を記載することが最も重要かと思われます。
著作権の譲渡をしない版の契約書文例はこちら。
契約書
[受託者:絵描きさん](以下「甲」という。)と[委託者](以下「乙」という。)とは、イラスト作成業務の委託に関し、以下のとおり契約を締結する。
第1条 (委託)
乙は、甲に対し、以下のイラスト(以下「本著作物」という。)の作成を委託し、甲はこれを受託した。
(1) テーマ:
(2) サイズ:
第2条 (納入)
1 甲は乙に対し、本著作物を以下の形式により、平成24年5月1日までに、乙に対して納入する。
・psdデータにて、指定のオンラインストレージ上にアップロードする方法
2 乙は、前項の納入を受けた後速やかに納入物を検査し、納入物に瑕疵がある場合や、乙の企画意図に合致しない場合は、その旨甲に通知し、当該通知を受けた甲は、速やかに乙の指示に従った対応をする。
3 納入物の所有権は、対価の完済により乙に移転する。
第3条 (権利の帰属)
本著作物のすべての著作権(著作権法第27条及び第28条に規定する権利を含む。)は、対価の完済により乙に移転する。
第4条 (著作者人格権)
1 乙が本著作物の内容・表現又はその題号に変更を加える場合(拡大、縮小、色調の変更等も含む。)には、あらかじめ甲の承諾を必要とする。
2 乙は、本著作物を利用するにあたって、著作者の表示をすることを要しない。
第5条 (保証)
甲は、乙に対し、本著作物が第三者の著作権その他第三者の権利を侵害しないものであることを保証する。
第6条 (対価)
乙は、甲に対し、イラスト作成業務及び本著作物の利用許諾の対価、その他本契約に基づく一切の対価として、金○○○円(消費税込み)を、平成○年○月○日までに支払う。振り込み手数料は乙の負担とする。なお、対価の内訳は、以下のとおりとする。
金△万円:本著作物創作業務に対する対価
金□万円:本著作物に関する著作権譲渡の対価
報酬・対価に係る消費税や所得税(源泉徴収)については、支払いの相手方や報酬・対価の額等によって取り扱いが異なりますので、必要に応じ税の専門家に相談してください。
本契約締結の証として、本契約書2通を作成し、甲乙記名捺印の上、各自1通を保持する。
平成 年 月 日
甲 | 住所 | |
氏名 | 印 | |
乙 | 住所 | |
氏名 | 印 |
補足:それぞれできること・できないこと
依頼人(委託者、契約書文中「乙」)
- ×納品物のサイズ変更・トリミングを許諾を求めずに実行・利用ができない。(第4条) (著作権の譲渡契約が成立した場合でも、第4条での取り決めが「承諾を必要としない」でないかぎり こういったことがおきる)
- ○掲載のウェブページにおいて、制作者の氏名表記をしなくてもいい。(第4条2項)
- ○納品されたものの著作権に関して、有償・無償に関わらずさらに第三者に譲渡するができる。
- ○第3条にて「すべての著作権」と明記したので、二次著作物の創作ができる。
- ○納品された素材の二次利用、三次利用が実は可能である…
絵描きさん(受託者、契約書文中「甲」)
- ○およそいつも通りです。
- ×個人の裁量で納品物を公開することができない。
- ×(ほぼない話とは思いますが)納品物と類似したテーマ・モチーフ・作風のものを制作・ 他社に納品したときに、自分のかつての作品の著作権を侵害する可能性が出てくる。 (ソフトウェアプログラムの開発に関しては起きうる事案のようです。)
免責事項的な
専門家ではないので、文化庁のページの作成支援システムとマニュアルを行ったり来たりしながら、
切り貼りで作った感じ。
「著作権の無償譲渡を前提とした依頼」に対し、契約書訂正の提案をしたい、という
場合に手助けになればいいかなあ、と思います。依頼者に対して提案を行う場合は、
しっかりと権利譲渡に対しての対価を求め、もしその対価の支払いが難しいといわれるようならば
著作権の譲渡をしない方向へ交渉を進めることも
大事だと思われます。
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Mar. 17, 2012 twitter@amatoy